広島県安芸津町 今田酒造本店
「百試千改」の情熱を引き継ぐ女性社氏。
広島県安芸津町に蔵を構える今田酒造本店。酒銘柄「富久長」を命名したのは、「広島酒の父」とも呼ばれる醸造家・三浦仙三郎。その昔、酒造りに不向きと言われていたこの土地の軟水から吟醸酒を生み出す「軟水醸造法」を編み出し、その革新的な技術は現代の吟醸酒造りの礎となっています。
この三浦仙三郎翁直系の酒造りの技術と、「百試千改(ひゃくしせんかい:百回試し、千回改める)」という広島の吟醸酒造りの伝統を引き継ぐのは、今田酒造本店取締役で杜氏の今田美穂さん。厳しい仕事が多く、女性には難しいといわれる杜氏の仕事ですが、今田さんは造りのみならず、富久長のラベルデザインや営業などもこなす情熱的な女性杜氏です。
最高の技術をすべてのお酒に。
富久長を作る道具や作業はとてもシンプル。だからこそ、五感をフルに働かせ、酒の微妙な変化を感じ取りながら最も適切な対応が出来るのだと今田さんは言います。品質に妥協せず、美味しいお酒をお届けすることが使命と語る今田本家酒造では、醸されるすべてのお酒が大吟醸と同じ手法で造られています。手間もコストもかかる大変な方法ですが、この品質にかける思いによって、富久長は口にするその時まで若々しく澄み切った印象を失わないのです。
幻の酒米、八反草。
「八反錦」「八反35号」など、広島を代表する酒米である八反系統。その元祖が、1875年に育種された「八反草」です。一時は奨励品種として栽培されていましたが、背丈が非常に高い為栽培が難しく、現代のお米に比べて収穫量が少ない上、収穫される米は小粒で硬いなど、酒造りに適した品種とは言えませんでした。そのため徐々に姿を消し、100年以上栽培されることはありませんでした。
今田酒造本家は、幻の品種となった「八反草」に理想とする酒造りの可能性を見出し、たった一握りの種もみから数年かけてこの幻の酒米を復活させました。人間の都合を優先した品種改良がされていない八反草は、広島の風土を色こく映した品種と言えます。硬く小さな米粒だからこそ高精米に耐え、雑味のない爽快なお酒を生み出します。
米を育てた大地を感じさせてくれる「八反草」から造られるお酒には、広島の自然の優しさが宿っています。
今田酒造本店
広島県東広島市安芸津町三津3734