雑魚や外道と呼ばれてしまう魚を、技術と努力で高級魚みたいな味わいへ。魚食の未来を紡ぐ、漁師と四十八漁場の話。
四十八漁場について https://www.48gyojyou.com/about/
2023年11月17日。私たち四十八漁場は、「子どもとつくるたべものがたり in 佐賀」(PR TIMES社主催)に参加するために、佐賀に入った。
四十八漁場は関東圏でのみ展開する居酒屋だ。なぜにわざわざ、佐賀で行われるハイコスト必至のイベントに臨んだのか。それは、私たちの展開する事業にとって重要な意味とミッションがあったから。
『意識変革・行動変容なしに漫然と漁獲をしていけば、2048年以降には魚を食べられなくなる』(意訳)
かつて発表されたレポートから店名を引いた四十八(よんぱち)漁場。
本STORYでは、四十八漁場の取り組みや想いを、イベントの事例を通してお伝えしたい。
<もくじ>
1.唐津・串浦の腕利き漁師と四十八漁場
2.海の厄介者「アイゴ」が大人気商品に!
3.未利用魚って何?持続可能な魚食の未来を願って/フードポテンシャル
4.夢メニュー「1匹で2度おいし~ぎょ」
唐津・串浦の腕利き漁師と四十八漁場
佐賀県は唐津市・串浦の漁師、通称まあ君(左)と小田さん(右)。
まあ君は串浦で漁師の家に生まれ、定置網漁を継いで操業する生粋のフィッシャーマン。小田さんは料理人をするうちに漁業の魅力に目覚め串浦へ移り住んだという異色の一本釣り漁師だ。
まあ君と小田さんには、私たちの事業の根幹にある考えをじっくりと伝えた。そこに必要な鮮度やそのための魚の〆方なども共有させてもらい、当社の想いを理解してくださる佳きパートナーとなった。
神経〆を施したり腹抜きをしたり、魚種・状態を見極めて血抜きをコントロールするなど、鮮度保持や旨味向上のための技術をとことん突き詰め、今では当社に欠かせない漁師として、日々魚を入れてくれている。
なお、当社のお付き合いのある漁師さんたちが送ってくれる魚には、当たり前のようにこうした処理がなされてくるが、一般に見ればこれは普通ではない。
そもそも獲るだけでひと苦労なのに、こんな面倒なことをわざわざするなど、正気の沙汰か?というくらいの手数が掛かる。
▽料理人驚愕のクオリティで届く、小田さんが〆たマダイ。@ある日の四十八漁場
まあ君と小田さんが送ってくれるすばらしい佐賀の魚が関東で感動を生んでいるということを、地元の方や魚食から遠ざかっているであろうキッズにも伝えるため、そしてまあ君と小田さんには、消費者の方が食べて喜ぶ姿を間近に見てもらうために、私たちは佐賀まで遠征した。
海の厄介者「アイゴ」が大人気商品に!
アイゴは、釣り人からも外道と言われ、釣れてもあまり喜ばれることのない魚。
鋭いヒレには毒があり、獲れたらすぐに腹抜きのなど処理をしないと、身が磯臭くなっておいしくない。
西日本では「バリ」と呼ばれており、その意は「尿」であるとのことだ。
不名誉な呼称が、それをよく表している。
また、値が付かないくせに藻や海藻を食べ尽くして磯焼けを起こす一因にもなっていることから、漁業者からも厄介者扱いを受ける。
しかしこのアイゴ、この時季は産卵を終えて脂ものり、ちゃんと処理をしさえすれば高級魚に匹敵するようなおいしいふわふわの白身を楽しめるのだ。
このような市場流通には乗らない“訳ありだけどおいしい魚”を食べることで、魚食の未来も2048年限りにはならず、漁師の収入にも直結するようになる。
こうしたサイクルを生むことに自分たちの使命を見出し、私たち四十八漁場は、おいしい魚貝だという条件が合致しさえすれば送ってもらう。
時化続きで魚自体獲れない日が続いたそうだが、ラッキーなことにイベント直前にアイゴが獲れたため、活かしておいたものを当日の朝処理して持ってきてもらい、それをまあ君と小田さんに自ら焼いてもらった。
(本来は二日もイベントに来てもらうなど操業上無理な話なのだが、18日・19日は台風かのような荒れぶりで海に出られない状態だったため、両日いらしていただけることに。ありがとうございました!)
「おいしく焼けたアイゴ、いかがですか~」と声をかける。
活けのサザエも一緒に焼いているので、匂いを頼りに立ち寄ってくれるのだが、アイゴを見るや「これ、バリやろ?!」と、魚に詳しい方にはやはり忌避されてしまう。
そんな中でも真剣に説明を聞き、味わってくれる方々が。
「これ、本当にふわふわで、高級なお魚でもおかしくない!」
「子どもが喜んでたくさん食べるから、もう1尾もらえる?」
と、最高の感想をたくさんいただくことができた。
「おいしいね!これ。」の声を聞き、連鎖して売れていくアイゴ。
「ごちそうさまでした!すごくおいしかったです!」と感想まで伝えにいらしてくださる方も。
おかわりしに来た方の様子を目撃し、また新たなオーダーが入る。
焼いている間、漁師の二人を紹介しながら、私たちの取り組みにも触れていく。
美しい串浦の海で獲れ、二人の努力を経て届いた魚が、1,000キロ以上離れた東京で感動されているということに、誇りを感じてくれた方も多かっただろう。
二日目、アイゴは早々に売り切れとなった。
未利用魚って何?持続可能な魚食の未来を願って/フードポテンシャル
▽殻を固く閉ざしたサザエが動くのを、初めて見た子
会場で「豆アジの唐揚」を試食してもらおうと、声をかけて回った。
子どもさんの、魚に対する評価はなかなか厳しい。
保護者の方の「この子、魚ダメなんです…」という返答は、想像以上に多かった。
しかし、カリカリに揚がった豆アジに目を開いて味わってくださる保護者の方の様子を見て、恐る恐る食べてくれた子どもたちの表情は、みんなパッと明るくなった。
今回一番人気が高かったのは、実は「豆アジの唐揚」だ。
試食した方が、公園を1周回った末、四十八漁場に豆アジの唐揚を買いに戻ってきてくれるケースがとても多かった。
「子どもが、初めて(魚の料理を)もっと食べたいって言いました!」
四十八漁場と契約漁師のタッグで未利用魚「豆アジ」の消費1トンを目指し、商品化!約3週間で500キロ、3,846食を提供
四十八漁場は、2048年以降も今と同じように魚に舌鼓を打ってもらえる未来を作りたい思いで「居酒屋から漁業を創造する」をスローガンにしてお店をやっている。
今回例にしたアイゴは、獲れても市場にはほとんど並ばないので食べたことのある人は少ないし、唐揚にした豆アジは、網に入ってしまうと水揚げするしかないのだが、氷や発泡スチロール、輸送費の方が高くなってしまうため、結果出荷に至らずに養殖のエサになるか、最悪は廃棄だ。出回っているものもあるが、それはごく一部。
海の資源は有限だ。
だが、その資源にも様々な種類があって、まだ日の目を見ていないものもある。
それをいかに活かしておいしくいただく工夫をするか。
工夫をした先で人気の商品ができたとしたら、1つのもったいないを減らすことができる。
手段で持続可能性を見出せるのだ。
事業者として担う役割を、改めてかみしめることができた。
近年やっと知られるようになってきたが、こうした利用されない魚を「未利用魚」や「低利用魚」という。
これまで購買の対象になってこなかった素材には、きっとキラリと光る可能性が眠っていて、それはきっと、これからの食の、大切なカギとなるだろう。
四十八漁場はこれからも、素材のポテンシャルを引き上げて、すばらしい日本の食のあり方を追求していきたい。
未利用や低利用という食材の扱いがもっとポジティブなものになるよう、四十八漁場はこれから「フードポテンシャル」という独自の造語を使って、食に対峙していく考えだ。
夢メニュー「1匹で2度おいし~ぎょ」
今回「子どもとつくるたべものがたり in 佐賀」では、ともはる君が発案してくれた、1匹の魚を2倍楽しめるというすごいアイデアの料理を提供した。
子どもの柔軟な頭で考え出されたユニークな一品に、料理人も多大な刺激を受け、楽しんで開発することができた。
こうした発想は、子どもの魚への興味を増すことができるかもしれないという、すばらしい勉強の機会となった。
▽ともはる君と商品開発をした松林
佐賀行きのきっかけを作ってくれたともはる君に感謝したい。
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四十八漁場(よんぱち・ぎょじょう)
2006年に鮮魚モデルを立ち上げたのち、当時鮮魚業界ではタブーだった独自流通を開拓し、2011年7月に四十八漁場の出店を開始。
四十八漁場の店名に入る『48』は、2048年に天然の魚が食べられなくなるかもしれないという論文から引いたもの。
未利用魚の活用事例には、足が早いため流通できず地元だけで食べられていた東北の「どんこ」や、籠漁でカゴにどうしても入ってしまうのに加食部分が少なく商品にならない「毛ツブ(アヤボラ)」などがあり、漁師の収入のベースアップを図る方法に繋がっている。漁獲高を追う漁業から、質を上げてよりよいものをフェアトレードする漁業へ。「居酒屋から漁業を創造する」ことを理念に、ともに魚食の持続可能性を追求できる漁業者と協同し、飲食店を運営している。
●店舗●
池袋東口店
西新宿店
秋葉原昭和通り口店
内幸店
山王パークタワー店
品川店
府中店
町田駅前店
調布駅前店
川崎店
エキニア横浜店大
宮西口店
新浦安店
九段下(すしと天ぷら)
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